2月24日:悪の巣窟・コンノートプレイス





昨夜は少し寒かったが、大体良く眠れた。
午前中はコンノートプレイスというデリー有数のオシャレな場所に行った。そこで2人組のインド人に話しかけられた。「インドは好きか?」「インドに来て何日か?」など他愛のない会話をする。しかし、僕が次はアーグラーに行くというと、そのインド人は「そこは非常に危ない、日本人旅行者が殺された」という。「いやもう切符買ってるし」と答えるが、「キャンセルできるから問題はない」という。最後にチャーイを飲みに行こうと誘われるが、喉が乾いてないからいい、と断ったら、意外にあっさり諦めて「Good by my friend」と言って去っていった。

その後、コンノートプレイスの中心の公園にリスがいたのでしばらく眺めていたら、男が現れて、「リスの餌のピーナツあげるよ」話しかけられた。そしてすぐに彼の友人2人がやってきて変な日本語で話してきて、握手してきた。これは何かやばいと思って「ピーナツ買いに行ってくるよ」と言ってその場を離れようとしても手を離してくれない。ちょっと話をしようと言ってきたので、渋々座る。そこで彼は手帳を取り出し、ページを開けて僕に見せた。そこには、「この人は耳かき25年のベテランで最高に気持ちよかった」「この人は耳かきのチャンピオン。料金は気持ちでいい。いい思い出になった。」などど書かれていた。これを読んで、僕はヤバさ確信した。気持ちの料金っていくらだよ?どうせ法外な金を要求されるに違いない。とにかく断ったのだが、1分間無料で調べるといって、強引に右耳を掃除された。腕は確かなようで、あっというまに耳クソがとれた。右耳はきれいになったけど、左はいくらだ?と訊いてみたら、手帳を広げて僕に見せた。「けっきょくRs400払った。本当によかったのかわからない。」などと書かれていた。僕はトゥーエクスペンジブと叫んで走って逃げた。

もうコンノートプレイスは懲りごりだと思っていると、またまたオジサンに話しかけられた。「コンノートプレイスの地下のエンポリウムは非常に高い。スーパーマーケットで買え」と言っているようだ。硬い表情の僕に彼は「私はビジネスマンではない、家に帰る途中だ」と言って去っていった。よくわからないが、一応親切で言ってくれたのか?

そして今度は少年に話しかけられた。無料で地図をあげるから観光局へ来い、とのこと。しかしもう、うんざりしていたので適当に返事をして退散した。

まだ1時間しか経ってないのにどうしてこんなに不愉快な立て続けに出来事が起きるんだと嫌になった。しかし、ここへ来た目的の一つであるマクドナルドを発見したので中に入った。牛肉を使わないマクドナルドのハンバーガーに興味があった。少し高いがマハラジャマックコンボを注文した。まあこれも話の種だ。ポテトとコーラは日本と同じ味、マハラジャバーガーというのは要するにマトンのビッグマックなようなもので、予想に反してかなり薄味だった。食べやすかったが、やっぱり牛肉のほうが美味いと思った。

その後、足早にホテルに戻った。そして午後からはオールドデリーに向かった。
まずラールキラー(城)に行くために旧市街を歩いた。たどり着くまでの2時間、白人や東洋人の旅行者を一人も見なかった。そして、コンノートプレイスとは違って一回も声をかけられなかった。本当に庶民の街なのだ。メインバザールに負けないぐらい活気はあるが、なんというか地味で砂ぼこりでくすんだような感じの街だ。
ラールキラーはとても美しかった。オールドデリーが言っちゃ悪いが汚かったのでなおさらそう感じた。芝生に座ってホッと一息。外の世界とは大違いだ。その後はジャマーマスジットに行った。
帰りは初めてリキシャーを使おうと決めていたので、緊張しながら運転手に話しかけた。なんとなく相場はRs20ぐらいと思っていたが、一人目はRs45と言ってきた。こちらがRs20と言うと、ダメたという。Rs30までなら出してもいいと思っていたのでRs25というが、それでもダメ。値下げする気はないらしい。二人目は初めからRs50と言ってきたので、これもやめた。次はサイクルリキシャーをあたってみたのだが最終的にRs20で話がまとまった。サイクルリキシャーなら多分相場の倍ぐらいだろうが、まあ初めてのリキシャーだし上手く言ってホッとしていた。
それから40分ぐらいの間、自転車の後ろの少し高いところからデリーの街を眺めることができて気分が良かった。
しかし、降りる時にRs20を渡すと、どうも足りないと言っている様子。僕は値段交渉をする時に、間違いがないように手の甲にボールペンでRs20と書いてあったので、それを見せつけて、急いでその場を退散した。後ろからはハローとか運転手が叫んでいる。しかし、ダメ元で言っているのか、追ってはこなかった。
本にはこんなこともあると書いてあったし、よくあることと思ってあまり気にしないようにしよう。

晩飯は歩き方にエッグドーサが最高と書いてあったので食べてみたが、なんというか、最低ではなかった…。

それにしても、今日も1日色々あった。やっぱり日本人の一人歩きって声をかけられやすいのだろうか。次から声をかけられないように対策をとらねば。しかし、初めから観光局に来いとか言ってこれば断りやすいのだが、はじめに挨拶をして、次に世間話をしはじめると逃げにくくなる。しかし、彼らもダメ元でやっているのか、わりとあっさりしている。それでも鬱陶しいからまったく英語の出来ないふりをしようか、それとも走って移動するとか。

とにかく体の調子はいい。明日はその危険なアーグラーだ。

【13年後のつぶやき】
コンノートプレイスのくだりは今読んでも笑ってしまう。本当に激しくターゲットにされてる様子がおかしい。当時は不愉快だったが、いい思い出だ。俺も気弱で頼りない若者だったが、最後はちゃんと断っているところは良い。ところで当時のレートはRs1=3円程度だった。Rs400にはびっくりした。
こういう経験を何度もして、俺は怪しいインド人に対処する方法をマスターした。それは立ち止まらないことだ。奴らは蚊と一緒だ。止まっていると刺されるが、動いていると刺されない。話しかけられても歩き続けるのだ。できれば移動は早足で、そして奴らとは目も合わさない方がいい。2回目の旅行ではこれでほとんどのインド人を撃退した。
しかしまあ、怪しいインド人とのふれあいはインド旅行の定番なので、初めから対策を講じるのではなく、エンターテイメントとして一度は経験してみても良いと思ったりもする。

リキシャーとの値段交渉は、がんばっている。しかしやりすぎのような気がする。絶対に俺はボッタクられないぞ!という気概はいいが、もう少し大らかに対応しても良かったと思う。適正料金はわからないが、サイクルリキシャーを40分走らせて、Rs20というのは運転手がちょっと気の毒な気がする。俺が降りた後、足りないとわめいたオジさんの気持ちもわからんでもない。

それにしても、俺は頑張りすぎていた。一日中動きまわって、色々と新しいことを経験して、疲れないわけはないのだが、体の調子はいいという。当時の俺は健康な若者で病気も滅多にしないので、自分を過信していたのだと思う。ここでもう少し体をいたわっておけば、後日の悲劇を避けられたかもしれない。


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