12月2日:インド出発前日
出発前日だが、俺はタラタラと準備をしていた。実のところ、それほど強くインドに行きたいと思っていない。行くのは前回の失敗のリベンジのためであって、積極的に観光しようという気分はない。まあ、前回も観光旅行じゃなくて修行の旅のつもりだったが、今回も同じ路線で行くつもりだ。きっと楽しいことよりツラいことのほうが多い旅になるだろう。そう思うと気が重い。
前回のインド旅行では前日は興奮と緊張で眠れないぐらいだったが、今回はそれはまったくなし。意外なほど冷静だった。あの時以降、俺は色々と海外経験も積んできたので、まあシンドいだろうけど、なんとかなるだろうと楽観的に考えていた。旅行期間も3週間だけなので、ちょっと行ってちょっと帰ってくるぐらいの気持ちだ。あの頃みたいに大げさに「日本よさらば、また逢う日まで!」とかの感想はない。
そんな盛り上がりのなさに、自分としては少々残念に思う部分もある。どうせ海外に行くのならドキドキ・ワクワクしたいものだ。そういうのって、若いころの特権なのかな?今は持ち物やスケジュールの確認など、実務的なことに目がいって、あまり感情的になれない。サラリーマン時代の出張の準備と同じような感覚だ。
大人になるってこういうことなのか。だとしたら歳を取るって本当につまらんと思う。
それはともかく、夜には準備が完了した。そして、いつもどおり酒を飲んで寝た。まったく普通の一日だった。